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コラム『家族だって他人』第48回 他人と他者 


「家族だって他人」の連載が終わるのだそうだ。だそうだ、と言うとまるで他人事である。いやいや、私も連載している側なので、終わるとか、終えるとか言い切る方が正しいのだろう。

「家族だって他人」というタイトルで、色々と家族について書いてきたが、いつだって我々が言いたかったのは、家族であっても恋人であっても、自分とは別の人格を持った「他者」である、ということだ。

他人と他者は似て非なるもので、「他人」は先程の「他人事」や、「他人行儀」、「赤の他人」などの使い方にも現れているように、「自分とその人の間にはほとんど関係がない、関知しない」というような意味が含まれる。一方で「他者」は「他の人」の意味で、その人との関係性は規定しない。

そういう意味でいえば、家族は決して「他人」ではない。他人のふりをしたり、他人のように、関係を絶って暮らすことは出来るけれど、「他人」にはなりきれない。だから苦しむし、だから救われる。家族であっても「他者」である、ということは、「他人」にはなりきれないけれど、自分とは違う人間である、という意味で家族との間に一線を引き、背負いすぎているものを置き、自由になって、そこからまた家族を眺めてみよう、そういう試みだったと思っている。

私自身も、日々一緒に暮らす家族について、また自分が育った原家族について、矯めつ眇めつ、味わい直した感じがする。特に原家族については、振り返るタイミングによって、見え方や感じ方が変わることに気付かされた。過去の出来事は変わらないけれど、出来事の意味は自分自身の成長や変化によって変わる、ということだ。

そして、家族の存在によって、私たちは長い人類の歴史の中での、自分の位置が分かるのだ。自分は誰から生まれて、その誰かの親はどの人で、そのまた親は・・・とたどることによって、延々とつながってきた命の川の流れの、ほんの一部、ほんの一時が、自分なのだと分かる。その、時間の流れを俯瞰する目をもったときに、自分の親に何をされたか、親ガチャが当たりだったか外れだったかとかいうことよりも、自分は一人ぼっちではなく、流れの一部なんだということを意識する。その時、前後にいるのが親子で、横にいるのが兄弟姉妹である。たまたま、偶然、親と子として生まれて、生きている。

偶然隣合わせで生まれてきた人と、仲良く支えあえたら、それはすごく幸運なことだけれど、そうでなくても悲観することはないと思う。もっと合う誰かを見つけるかもしれないし、合わないと思っていた人と、分かり合える日が来るかもしれない。どちらにしても、自分以外の誰かに、左右されすぎないこと。

とにかく私たちは、自分が乗る小さな小舟を、必死にそれぞれ漕いで進んでゆく。時に疲れて、波にたゆたうだけのときもあれば、嵐の中を並みに抗って進んでゆくときもある。でも、いつだって、どんなときだって、舵を取るのは自分自身である。そのことさえ忘れなければ、いくらでも人生は切り開いていけるし、失敗してもやり直すチャンスがある、と私は思っている。進む方向がわからなくなったら、みことのドアを叩いてほしい。あなたが迷っている時に、私たちは傍らで一緒に迷い、あなたが進みたいと思っている方向を探し当てることに協力する準備は出来ているから。

と、いうわけでさっきから私の頭の中を流れる脳内BGMでコラムを終わろうと思う。また、次の連載でお会いしましょう♪

♪ その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶものに おまえのオールをまかせるな        

by 中島みゆき

文責:M.C


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