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コラム『家族だって他人』第44回 家族のいる場所 


「家族だって他人」をテーマにこのコラムを綴る時、私は常に家族とは何ぞや、と自問してきたように思う。そして今回のコラムを書くにあたって改めて家族というものを考える時、私は無意識のうちに家族と“家庭”と混同していたかもしれないことに気がついた。

居心地、というからには家族は居場所を保証するものでもあるわけで、その保証された居場所が家庭なのだと今は思う。

時々「肉親からしか得られないものがある」というようなことを耳にすることがある。血縁・地縁・人の縁を大切にする日本らしい発想だが、家族からしか得られないものとは?

その一方で、家庭で得られるものは大きいように思う。安全と安心感と、子どもならそれらを基盤とした生活の基本スキルも身につけられるし、大人は心身のコンディション調整もできる。学校や会社など、家庭のような場所はたくさんあるけれども、しかしどこも、家庭ほどの機能はないだろう。万能な安全基地。だからこそ、家庭が揺らぐとそこに住まう家族は危険に晒される。家庭が失われれば、人は容易に温かな居場所を失う。

では、そこが家庭となるには何が必要だろうか。血縁関係のある人々だろうか。私の答えは否である。血縁があろうとなかろうと、そこを居場所と定めてそこにいるメンバーと健やかな関係を築く意思のある人が複数いれば、そこは家庭たり得るのではないだろうか。逆に言えば、血族でなくとも家族になりたい人、時間を経ながら熟していく温かな関係を求める人が複数いるならば、そこは家庭になるだろう。

「家族」は必ずしも「血族」でなくてもいい。夫婦はもともと他人である。親と子だって別の個人だ。別々の人間がたまたま同じ場所を居場所として肩を寄せ合う、それが私の家庭のイメージである。家庭に集う人や動物が家族であり、そこで織りなされる悲喜交々が、そこにいる人たちを喜ばせたり傷つけたりする。それが家庭でしか得られない、あなたの、私の家庭でしか得られないことなのだと思うが、どうだろうか。

ここまで考えてきたら、家族は家庭で家族になるのではないかと思えてきた。どの家族も家族になって行く途中だ。父は父になり母は母になり、子どもはいつか大人になる。家庭という居場所がなくてはどれも成り立たない営みだ。

居場所が人を作る。そういう考えは、ナンセンスだろうか。

                   (文責:C.N)

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