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コラム『家族だって他人』第28回 家族のカタチ 


 私には、産んだ覚えのない、黒くてもふもふの息子がいる。別名、愛犬である。(みことのシンボル「みこ」ではない。念のため。)

 彼の感情表現はとってもストレート。家の中で私について歩く、遊びたいときはおもちゃを咥えて持ってくる、注目してほしいとひぃひぃ鳴く(ものすごく悲壮な声を出すので、無視をするには非常な精神力が必要となる)。他人が自分の縄張りに入ろうとすると吠えて威嚇する、好きな相手にはしっぽを振って飛びかかる、腹が立つと抗議のために部屋の中におしっこをする。でも、嫌なことも嬉しいこともすぐに忘れちゃうので、いつまでも怒っていたり、根に持って嫌がらせをしたり、喧嘩してギクシャクしたりはしない。

 犬にもいろいろと性格があるだろうが、うちの子は怖がりで、遊ぶのが大好きで、甘えん坊だ。人に対しても他の犬に対しても、好みがはっきりしていて、好きな人は大好き、そうではない人には全く興味を示さない。「嫌いな人」というのは今のところいなそうだ。好きな人や犬の名前を覚えていて、名前を聞くと、とてもはしゃぐ。「おばあちゃん来るよー」なんていうと大騒ぎだ。が、名前とその人物がどう結びついているのかは謎で、私の名前を聞くと、私が目の前にいても大騒ぎする(笑) ちょっとお馬鹿なところもまた可愛い。恩師いわく、人間と犬は種族を超えた養子縁組が出来るそうな。

 私の実家では、数年前まで猫を飼っていて、彼女が「にゃあ」と鳴くと、誰かが水や餌をあげたり、ドアの開け締めをしたり、と彼女の要望を叶えていた。彼女が発するのは「にゃあ」だけでも、人間の方が状況と猫の様子を見て、ニーズを汲み取っていたのだ。当然、ニーズを汲み間違えることもあるが、そういうときにも「にゃあ」と鳴き続ければいずれは正解にたどり着く。

 言葉でいろいろと説明しなくたって、考えや文化や、そもそも種族が違ったって、ちゃんと家族としてやっていける。その証拠は日本中至る所に存在する。私たちは、毛むくじゃらの息子や、牙のある妹や、羽のある弟をもったり出来るのだから、家族のカタチも構成員も、もっと自由に出来るんじゃないかなぁと思う。日本ではまだほとんど見ないけれど、お父さんがふたりのお家とか、お母さんがふたりのお家があってもいいし、数人の男女があつまって家族をつくったっていいと思う。

 参加している人が同意しているなら、他人が外から見て、とやかく言う必要なんてないと思うのだ。今は、異性愛者の男女カップルが暮らしやすいように、法制度ができていて、法律婚をしている男女が優遇されている。法律婚の男女がマジョリティで、「異性愛の男女」を基本形に考えたり、子どもをもつことを前提にしたりすると、異性愛じゃないこと、恋愛できないこと、子どもを産めないこと、様々の要因で自分をマイノリティだと感じなければいけないし、不全感を抱かないといけない。そうじゃなくて、いろいろな家族のカタチ、愛のカタチを認めていけたらいいな、と私は思う。

 そして、「家族」や「愛」の名のもとに、不当に傷つけられたり、剥奪されたりする人がいなくなるように、願って止まない。もし、父、母、血の繋がった子ども、という一見普通の家族のカタチを取っていても、家族ひとりひとりが幸せじゃなかったら、そのカタチは歪で間違っているのかもしれない。あなたが幸せになるカタチはあなたが決めて、選べばいいと思う。
      (文責:M.C)



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