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コラム『家族だって他人』第6回 親ガチャと言う勿れ?


 昨年は、「親ガチャ」というネットスラングがにわかに流行り、2021年の流行語大賞にまでノミネートされた。親ガチャとは、ソーシャルゲーム(以下、ソシャゲー)によくあるガチャガチャになぞらえて「親は自分で選べない、どんな境遇に生まれるかは運」という意味で使われる。子どもから見て、家庭環境や容姿などが恵まれていれば当たりで、恵まれていなければハズレと言われる。

 この「親ガチャ」という言葉は、紹介されるとともにあっという間に広がり、結構、大きな波紋を呼んだ。その言葉を聞いて怒ったり泣きたくなったりする親がいる一方で、社会的貧困という現代の様相を反映しているから個人に帰結させるのではなく、もっと福祉を整えないといけないという意見も出てきた。

 しかし、大騒ぎをしていたのは誰だったろう? この言葉を使う主役である子どもたちの間で、果たしてそれほどまでに騒がれただろうか? 「親ガチャ」を消費したのはむしろ、大人たちではなかったか。

 自分の親は自分では決められない。家庭環境の良し悪しは運でしかない。というこの言葉は、果たして、諦めとともに子どもらにつぶやかれた言葉だったか? 親に向かって恨み言のように吐かれた言葉だったか?

 元々、ソシャゲーのガチャでは、極レアという大当たりは、なかなか出ないものなのだ。数%の確率なら良い方で、小数点以下の0.1%などの確率のものまである。その反対に、ハズレと言われるノーマルなものは、80~90%の確率を占める。親をガチャになぞらえた時点で、そのガチャを引く子どもらは、滅多に当たらないことをきっちりと知っていたのではないだろうか。

 知っているうえで、「はずれた~」という。そこには、「ハズレ=大多数と同じ」という安堵感がある。当たりを引いた友達へは羨望と同時に、称賛もある。各々違うバックグラウンドを持っている同世代の友達の間で、その家庭環境のズレを見ないことにするのではなく、妬むだけではなく、親ガチャと言いながら公にすることで、子どもたちはお互いが気まずい思いを抱えずに、仲間として繋がり合える場を模索していたのではないだろうか。親というスケープゴートを作り出し、それを肴に、互いの団結力を高める。そんな可能性を秘めた言葉遊びではなかったか。

もちろん、そういう言葉遊び的なハズレではない、心の痛む家庭環境があることは、見過ごせはしない問題ではあるのだが。

 「親ガチャ」という言葉が生まれた子どもらの世界に、土足で踏み込み、様々な方面から親ガチャを語りだした大人たち。親ガチャによる子どもらの分断を鮮明にさせたのは、何に傷つき、何を恐れた大人だったのだろう。家族という小さな幻想を壊されることを恐れたのか。それとも、その幻想に振り回されて傷ついた幼い自分が亡霊のようによみがえったのだろうか。

 親ガチャをやり直したかったのは、本当は誰だったのだろう?

                        (文責K.N)


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