コラム『家族だって他人』第19回 シングル
シングルと聞いて、何を思い浮かべるかは人それぞれだろう。
ベッドのサイズ? エスプレッソやウイスキーの量? テニスや卓球の個人戦? 未婚の人、あるいは恋人のいない人?
私は、メモ書きの「シングル」の文字を見てシングル・マザーだと察した。子育て支援の現場でのことだったから。
それと同時に、生後間もない赤ちゃんを抱えて、ひとりで暮らすことの大変さへの想像がわっと頭の中に広がった。
夫がいても、何もしてくれない家庭だってあるし、ひとり親だって他の親族や近所の人や友達がたくさん助けてくれる場合もある。1人でも2人でも、親はみんな大変だ。そんなことは分かっている。
分かった上で思うのだ、1日24時間、週7日、幼い子どもの命をひとりで預かり続けることのキツさを。最終的な責任は全部自分にある、という重さを。
育児に非協力的なパートナーを持った、ワンオペ育児中の人達も同じかも知れないけれど、子どもに関することを全部自分で決めなければいけないのは不安だし怖い。間違っていたらどうしよう??と、思う。でも、他の人に決めてもらうことは出来ない。
命を預かるなんて大袈裟? そんなことはない。
例えば、子どもが夜中に高熱を出したとき、夜間の救急外来に連れて行くべきなのか、明日の朝まで様子を見るべきなのか、判断に困る、そういう状況は誰にでも起こる。様子を見ていて手遅れになったら?? そういう不安も浮かんでくる。
正解が何かは分からないが、どうしよう???と問いかけられる大人がもうひとりそこにいるのかいないのか、は大きな違いだ。それは、法律上の親権者が1人なのか2人なのかの違いではなく、目の前の命に責任を持っているのが1人なのか、2人なのか、の違いだと思う。
生後数ヶ月の赤ちゃんのお母さんが「シングル」と書かれているということは、そういう突発的な決定をひとりでしなければならない、ということで、そういう決断がいつやって来るか分からない緊張とともに生きているということだ。特に生まれたての赤ちゃんなんて、寝てるか泣いてるかだから、今がどういう状態なのか、新米の親には判断が難しいのだ。
だから、シングル・ペアレントは精神的にキツいし、脆弱だ。せめて経済的には、安心して暮らしていて欲しいし、育児の手だけは多くあって欲しい。
責任を代わってあげることは出来ないけれど、大変さを解ること、辛さを分つこと、決定に寄り添うことは私たちにも出来る。そういう気持ちでいるからね。
シングル・ペアレンツ達に心よりの応援を
ワンオペ育児中のパパ、ママにも、力いっぱいの労いを
親がひとりで頑張って倒れたら、子どもが共倒れになるから、それより前に助けを求めてくれることを願って。
(文責:M.C)
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