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コラム『家族だって他人』第24回 矛盾は ものの上手なり  


 少し前に、学校では化粧禁止なのに、社会に出た時には女性は化粧をするのがマナーと言われるのは、矛盾してるという話しが話題になっていた。

 なるほど、言われてみればそうだなぁと、最初は思った。
でも、ちょっと考えてみよう。服装や化粧や頭髪などの校則は、学生の本分は学業だからなどの理由を言われたりもするけれど、一番の理由は、

「TPOを身に着けろ」

ってことではなかったか。そう考えれば、その本質的な部分で、学校では学生らしく、社会に出たら社会人らしくという根元の考え方ところは押えているので、校則に何も問題はないような…。

 矛盾しているのは、化粧初心者に対して、熟練のマスターのようにきっちり化粧するのがマナーだと言ってのける社会の方かもしれない。しかし、実際のところは、完ぺきではなくても許されているし、許されない場合は、指摘され直すよう言われるだけで、それで仕事をいきなりクビには滅多にならないし、致命的なミスとも言えないだろう。つまり、当たり前と言いつつもそれが出来なくても、いきなりは困らない。ある意味これも、矛盾であろうか。


 本音と建て前という言葉があるように、どうにも世の中は矛盾に満ちている。

 ことわざですら、うまくいけば「三度目の正直」と言いながら、失敗すれば「二度あることは三度ある」と言ったりする。どっちなのかと、問いただしたくなることもある。でも、こういうのは、どっちもなのである。

 子どもには大人の言うことは矛盾に満ちていると感じる。一方で大人は、子どもの立ち居振る舞いは矛盾だらけに見える。

 自分の感情に常に従えば、気持ちなんてころころ変わるものだから、昨日言ってたことと正反対のことをやりだすなんてことはよくあることだ。

 例えば、不登校で、昨日の夜は、

「学校に行く」

と言っていた子が、朝になると

「行かない!」

 となる話しはよく聞く。それは、子どもにとっては何にも矛盾のない素直な気持ちなのである。なのに、横で見ている親からすると、前と今で言ってることが違うではないかと感じる。

 一方、子どもにしてみれば、昨夜は、学校には

「無理していかなくて良いからね。」

と言っていた親が、朝になったら

「ちょっとぐらい顔を出してみれば」

なんて言い出して、矛盾してるではないかと、なったりする。
 
 矛盾を正せば、すっきりするかもしれないが、常に正されたことを実行しつづけるのは、息が詰まる。矛盾を矛盾のまま抱え込み許される方が、家族として共に生きていくには、きっとお互い楽だろう。親でも子でも相手に常に正され続けると、清き流れに住みかねて、逃げ出したくなりそうだ。

 矛盾は正すのではなく、矛盾の中で生きぬくのがいい。そして、矛盾を使いこなせるようになれば、もっといい。

 自分に都合が良いものを、その時々に使えるようになれば、矛盾もそんなに悪くない。うまくいったら

「三度目の正直」

ダメだったなら

「二度あることは三度ある」

 そう言いながら次に進み、矛盾だらけの自分の気持ちに素直に生きる日があってもいいだろう。家族のことも、矛盾ばかり言ってるなと、片目をつぶりながら暮らしていけたら、楽なのになぁと思う。でも、結局のところはそううまくいかず、ヤキモキしながら過ごしてしまうこともある。

矛盾と付き合うのも楽じゃない。

                (文責:K.N)


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