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第四回 ほどよさのススメー人間関係における圧について



 関東地方は梅雨明けと同時に猛暑が続いていますが、皆さまご自愛されていますか。また、この度の土砂災害にて被災された方々、その周辺で尽力されている方々に心よりお見舞い申し上げます。
 個人的に、被災地から離れた場所に住まう者にできることとしては、災害の経験を忘れずに、自分事として思いを寄せ続けること以外にないと思っていますが、大きな事件や事故が立て続けに起こると様々な思いが交錯して、瞑目せざるを得ません。
 

 さて今回は、人間関係における「ほどよさ」について綴っていきたいと思います。

 集団作りにおいても個人に対しても、育てる時に必要なものとして、距離感があげられると思います。
 最近会話の表現の中で「圧が強い」とか「圧がすごい」という言葉をよく聞きます。少し前によく聞いた「目力」とはまた違うものなんだと思いますが、言いえて妙な表現だなあと思って、筆者もたまに使います。

 例えば、誰かに何かをさせる時―部下に仕事をさせたり、子どもに宿題をさせたりですねーさせる側は、大なり小なり圧をかけますよね。その時圧が強すぎるとどうなるか。圧をかけられた方は潰れます。
 どら焼きでイメージしてみましょうか。
 どら焼きがどら焼きとしての、あの、ころんとした形を保つには、皮・あんこ・皮、の絶妙なバランスが必要です。そのためには、適度に押さえなくてはなりません。押さえなくては、単なる皮とあんこです。
 しかし力を入れすぎるとどうなるか。もちろんあんこははみ出てしまい、皮もふんわりとした柔らかさを失って、見るも無残な「どら焼きだったもの」になり果てるでしょう。
 人も同じです。圧をかけるにも、個人やその集団に応じた圧でなければ、つぶれてしまったり、やる気を失って結果を出せなかったりすることでしょう。

 大切なのは、「ほどよい」圧をかけることなのです。

 かつて小児科医であり精神科医でもあったウィニコットは、”Good Enough"という言葉でそれを表現しました。悪すぎず、完璧すぎず、その中間の「ほどよい」対応が健やかな子育てにつながると彼は主張しました。
 彼のこの主張は、当時からあった多くの母親に対する「良き母であれ」という風潮に一石を投じたと言います。

 話を戻しましょう。しかしそのほどよい「圧」の程度を探るには、試行錯誤が必要です。
 相手にかける圧の調整を、試行錯誤を重ねながら慎重に行っていくその過程を、筆者は愛と呼びたいと思います。それほどに、手間と時間と神経のいる作業だからです。

 「自分もこれだけのプレッシャーを与えられて仕事を覚えてきた。だから同じことをこの人もできるはず」
 「この子を愛しているから叩いて強く叱って教えるんだ」

 ここまで述べてきた「圧」とは少し違いますが、こういった言葉には聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか。しかしこれらは、おいしいどら焼きをつぶしてしまうかもしれない考え方です。
 自分の経験や一方的な愛を盾にするのではなく、相手の力やポテンシャル、言葉の受け取り方などから、どの程度の圧をかければ相手が伸びるのか、それを見極めるのは大変なことですが、企業等で部下をお育ての方や子育て中の方々には、この「ほどよくやる」ことを頭の片隅にでもおいておいていただければと思います。

 いまひとつ人間関係における「ほどよさ」が分からなくてつまずいてしまう、どうしても子どもに厳しくしてしまう、とお悩みの方は、みこと心理臨床処までお問い合わせください。お手伝いできることがあるかもしれません。(文責・C.N)


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