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第六回 こだわりの…。(つれづれコラム) 



何かにこだわる。

というのが、実は大好きである。

元々、こだわらないようにしようと思えば、きっとほとんどの物事にこだわらないで、さらさらと流れて生きていくことの方が多い自分としては。

例えば、お菓子作り。材料にこだわろうと決めてみる。家の台所に転がっているそこら辺の小麦粉を使うのではなく、わざわざ、ちゃんとしたスーパーに行き、その先で製菓用のお高め小麦粉を買い、サラサラでダマになりにくいのを使う。

その、わざわざ、あるのに外まで買いに行くという無駄に手間なところ。多分、作る本人にしか分からない小麦粉が違うという、こだわり。その中に浸るだけで、とても楽しい。でも、おいしくお菓子が出来た時に、食べてくれる相手が、その内緒のこだわりに気付いてくれたりしたら、もっと嬉しい。そんな感覚。

そこには、自分に対しての贅沢と、ゆとりが溢れている。ついでに、それを認め共感し、許してくれる人がいたら(いなくても別にいいけど)、さらに心地いいという、本当に自分だけのわがままが、自分のためだけに許される。周囲の価値観に縛られる必要もない。最高の自分へのご褒美である。一見、他者からは無駄に見えるそのこだわりに掛ける手間暇も、頑張った自分に対しての肯定につながる。そんな気分になる。


一方で、自分が何かにこだわりをもつだけではなく、人のこだわりについて、知ることができるのも楽しいと思う。

その人が何に着目し、そして何に価値を置き、何を楽しいと思うのか。自分の知らない視点。目に留めることもなかったものが、スポットライトを当てて光り輝く瞬間は楽しい。

それだけではない。人が自分に向かって、こだわりを話してくれるというのは、それだけでとても貴重な体験である。なぜなら、世にいうこだわりの職人さんが無口で、あまり説明をしてくれないなんて言うのはよく聞く話だから。つまり、元々、こだわりというのは自分のためのものであって人にどうこう言う類のものではないって分かっているから無口なのだろうと思う。それでも、そのこだわりを、ほんの少しだけだとしても共有して話してもいいと思ってもらえること。それだけで、ありがたく貴重なのである。

さて、上記はどちらかというと、比較的ニュートラルな意味のこだわりについて書いたものである。こだわりという言葉には、もちろんほかの意味もあって「つかえたり、ひっかかったりする」(デジタル大辞泉より引用)意味などもあったりする。こういう意味だったりすると、こだわりが強いせいで、ときどき困ることもあるだろう。

でも、そのこだわりは、どこから来るのか。なぜ、そこにこだわるのか。それを知ること、考えること。これも、一つ、その人を知ることにつながる。自分のことで考えるならば、自分のことを見つめなおすことにもつながる。

何かに少し、目を留めて、心を留めて、思いを巡らせ、考えてみることは、ほんの少しだけ、今いる自分の世界を、構築しなおす作業にも似ている。

そんなことを考える。秋の昼下がり。(文責・K.N)
 


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