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コラム『家族だって他人』第32回 秘密は誰にでもある 



あなたには、家族にも言えない秘密があるだろうか。

この春から始まり、既に2期の制作が発表されているSPY×FAMILYという漫画を原作としたアニメをご存知だろうか。私はこの作品が原作もアニメも好きで、配信されているものをちょこちょこと観ている。

ストーリーは漫画らしくなかなかに荒唐無稽で、ファミリーコメディとでも言おうか。生きる伝説と称される名うてのスパイ・黄昏が与えられた任務遂行のため、ロイド・フォージャーという精神科医として身を偽り、たまたま出会った殺し屋を裏稼業とする女性・ヨル、超能力を隠し持つ孤児院出身の少女アーニャ、これまた予知能力を持つボンドという大型犬とかりそめの家族となり、ミッション完遂に挑むというもの。ちなみにそのかりそめの家族全員、アーニャやボンドも含め、自分の素性や能力については口をつぐみ、大人である黄昏とヨルは当然のように嘘をついている。人の心を読めるアーニャだけが全員の裏も表も知っているのだが、それがこの物語の要となっている。

そしてこのアニメの主題歌がOfficial髭男dismの「ミックスナッツ」という歌で、それも気に入ってヘビロテしている。ちなみにこの歌のおかげで、ピーナツは当たり前のようにナッツ扱いされているが、本当は豆なのだと思い出したのは秘密の一つである。

ところでこの歌の出だしで『袋に詰められたナッツのような世間』と歌われているのだが、私は家族もそうじゃないかと思うのだ。

同じナッツでも味も歯触りも風味も違う、何ならナッツですらないものもある、でもだからこそ美味しくて楽しい、それが家族ではないのか、と。

時に殻をかぶることがあったとしても、気心の知れた相手とはその中身をこっそり楽しんで。時には歯ごたえの硬さに驚いても、それもそのナッツの味だと納得しながら過ごす日常。

人には様々な顔があり、秘密もある。

もっと言えば、全員が家族の前でもありのままでいられないのは、アニメの中のフォージャー家もごく一般的な家族も同じなのではないだろうか。

かつて、人の多面性をマトリョーシカに喩えた心理学者がいたが、それを持ち出すまでもなく、鬼上司が家に帰れば子煩悩な親だったり(もちろんその逆もあるが)、家ではやんちゃして手のかかる子が学校では意外とおとなしくしていたり、などということはよくあることだろう。

家族だからこそ言えないこと・言わないこと、家族だから見せられない顔、家族にだけは分かってほしい気持ち。そんな秘密のようなものたちが折り重なって、その家族の物語を織り上げているように思うのだが、どうだろうか。

フォージャー家の今後はまだ分からないが(個人的には、コメディらしく大団円で終わってほしいと願っている)フォージャー家の生きる世界でも我々の世界でも、家族の間にある秘密の質量によって、時に様々な悲劇を呼び込むことがままあることだろう。重すぎる秘密や悪しき秘密、人を苦しめる類の秘密はいただけない。

ちなみにSPY×FAMILYはその辺りのバランスも絶妙で、コメディタッチではあるが、各人の抱える秘密には、それにまつわるなかなかに重い過去がある。それでも仮初めの家族それぞれが「今」を乗り切ろうとしていて、その時のドタバタとおかしみが秘密と同居しているのがミソである。

閑話休題。

誰にでも秘密はある。相手が家族であったとしても。夫婦間の秘密や親子間の秘密、秘密とまでは言えないけれど、口にはしないこと。

それくらいは、許されても良いのではないか。家族の中でも多少の秘密はあって良いのではないか。誰に対しても全てオープンなのが幸せとは限らない。

安心して秘密を抱えられる、そしてそれを話そうと思えばいつでも話せる、そういった家族があってもよいのではないかと思うのだが、どうだろうか。
               (文責:C.N)


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