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コラム『家族だって他人』第22回 触れる 和らぐ 眠くなる  


 人間の赤ん坊は、自立歩行ができるようになるまでの約1年間、当たり前に大人に抱き抱えられて移動する。その他、授乳もおむつ替えも寝かしつけも、養育者との接触の中で行われる。

 少し大きくなって自由に動き回れるようになると、養育者から離れて周りを探索し、友だちと遊んだり、時には隠れて叱られるようなことをしたりして、不安や空腹や疲れを感じたときに養育者のところに戻ってくる。

 そして、養育者にくっついたり、抱っこされたりして安心する。それからご飯を食べたり、身体を清潔で温かくしてもらったり、ぐっすり眠ったりする。信頼する養育者の手の温もりや、抱きしめられたときの腕に込められた力や、トントンとリズミカルなタッチは、子どもの心を落ち着かせる。


 年齢が上がるにつれ、親子でも抱っこしたり、手を繋いだり、というスキンシップは少なくなってくる。

 日本にはハグの文化は根付いているとは言い難いので、挨拶がてら相手を抱きしめたりしないし、めったに握手もしない。

 思春期以降、身体的に触れ合うのは、恋人や配偶者だけ、となる人は多い。恋愛中のスキンシップはリラックスというより、ドキドキするもので、それはそれで、素敵なのだけど。

 疲れたとき誰かに優しく触れてほしいと思ったり、悲しいとき誰かの胸で泣きたいなと思ったりすることは、誰にでもあるんじゃないだろうか。

 マッサージや整体のお店で、セラピストに身体を委ねて、凝りをほぐしてもらううちに、身体も心も弛んで眠くなるのは、人に触れらるということが心地よいからだと思う。他人に対して常に緊張する人は、マッサージや整体は苦手かも知れない。

 人間だって動物だから、心身の健康にとって、信頼している他者と触れ合うことは大切だ、と、私は思う。

 疲れて硬くなった肩や背中に、手を当ててさすったり揉んだりすると、相手の緊張が解けて身も心も和らいでくる。その日の出来事を、語りだす。揉んでいる方は、手を止めずに話を聞く。その内に話がゆっくりになって、寝息を立て始める。そういう相手を見て、今、文字通り「休んでいる」なあと思って安心する。

 私にとって家族は、こういうやり取りを、役割を交代しながら出来る相手であって欲しいと思う。

 性的な意味を持たない、ドキドキしない触れ合い。触れる、和らぐ、眠くなる。そんなスキンシップがある場所は、きっと温かくて帰りたくなって、そして守りたい場所に違いないから。

                 (文責:M.C)

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