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コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第1回  


拝啓、みこと心理臨床処 様

 初春の候、みこと心理臨床処のお二人及び、コラムを読んでくださっている読者の皆様は、いかがお過ごしでしょうか。

 この度、『家族だって他人』の連載コラムを終了し、新しいリレーコラムを始めることになりました。往復書簡ならぬ、リレー書簡。みこと心理臨床処3人でリレーしながら、コラムを綴っていこうというものです。

 それにしても、『家族だって他人』のコラムを書くときに、どうやってお二人は書いていたのでしょうか。そんな疑問が浮かびます。なぜそんなことを言い出すかというと、私たち3人、一緒に仕事をしているものの各々の個性が違いすぎる気がするため、こういうちょっとしたところにも、違いは現れるのかなと思ったからです。

 ちなみに私は、8割方、タイトル先行です。おおよそ1パラグラフぐらいの内容を思い浮かべ、そこから連想されるタイトルを先につけ、そして文章を書いていくというやり方をしていました。毎回、フィーリングで書き進んで着地するというスタイル。おかげで、初稿を提出すると、タイトルと文章全体の話があってないと言われることもしばしば…。
 
 などという、話はさておき、本題に入りましょう。私たち3名が、一緒に仕事をしていく中での大事なエッセンスとは何か? というのを、その時々で考えます。良くも悪くも三者三様。その良さを生かし、最大限に利用していく方法。うまくいく秘訣ではないけれど、きっと、背後に大きく関係しているものが、有るはず…。と、考えているうちに、ふと思い当たったのが「甘え」です。

 心理学的には、「甘え」と言えば、土居健郎先生の『甘えの構造』が有名でしょう。本書の中では、日本社会においては、「甘え」「甘えさせる」人間関係が人々の基本の心性として存在し、それが潤滑油となって集団としてのまとまりが保たれてきていたということが、書かれています。

 土居先生は、その良き「甘え」が失われつつあって、「甘ったれ」と「甘やかし」が増えてきたと警告していたわけですが、最近は、その「甘えの構造」自体、日本社会で流行らない。もう完全に消えてしまって「自己責任論」がメインの父性社会になってきたよねと言われ始めています。

 でも、実際はそうなのでしょうか? まだまだ、インフォーマルな関係の中には「甘え」は存在し、自己責任論が跋扈する中でも、気づかれないように身を潜めつつも、いまだに息づいている気がします。

 きっと、私たち3名の中にも、そこそこ良いバランスで「甘え」「甘えさせる」関係がうまく成り立っているのかなと思うのです。

 例えば、ある一名が、コラムの原稿を提出する予定の締め切り日に、原稿を出さなくても、「早く出してください」ということを言われることもなく、一定の信頼感でもって見守られています。それが続くと私も、真面目に出さなくても良いかな? と思って、締め切り日に出さなくなりはじめます。すると、そんな私たち二人を横目に、締め切り日にピッタリ原稿をあげてくるという無言の圧力…もとい、誠意を見せてくれるメンバーがいることで、慌てて二人して出し遅れたコラムを書き上げるというように。

 甘えというのは、ある種、相手に対する依存ではあるけれども、相手に健康的に依存しようと思うと、やはり一定の信頼感が無いとできないのではないかと思います。甘える相手を間違えると、自分の身を滅ぼしてしまいそうですから。また、甘えさせる側も甘えてくる相手に信頼感を持っていなければ、どこまで甘えてくるのか分からないという恐怖心が出てきてしまって、安心して甘えさせられない気がします。共倒れは誰だって、嫌でしょう。
 
 さて、そんなこんなで、私たち3名の関係性について、リレー書簡の初回ということもあり、「甘え」という心理学的視点を通して考えてみました。みことのメンバーは、実際のところ、どう考えているのでしょうか。

 ぜひ改めて聞かせてほしいです。こういう機会でもないと、つい、雑談に興じてしまって、なかなかじっくり聞く機会もないですので。

敬具

2023年1月 文責:K.N


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