リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第7回「場を作る」
私たちのカウンセリングルームでどのように過ごしているのかというお二人の話しを聞いていると、結局のところはクライエントさんたちを、誠心誠意迎え入れるためにどう準備をしているかという話なのだなぁと思う。それは、居心地が良い場を自分たちの手で作っている作業なのだ。
安心安全な場を作ることがまず、カウンセラーの最初の一歩だ。
二人ともそういう所作が自然と身についているようだ。なぜなら、さりげなく4通目で方向転換を図り、自由度を上げた書簡コラムも、そこそこ同じような感じに落ち着いている。まさしく、安定した場が作られている証拠だろう。
さて、カウンセリングルームの話に戻ろう。
私は、カウンセリングルームに入ってクライエントさんを待つ時にアロマは焚かないし、お茶をおもてなしたりもしないけれども、これらは単に、私が落ち着ける要素ではないからだ。部屋に入って真っ先にすること、それは窓を開けて、部屋の空気を入れ替えること。何となく、密閉された空間は好きじゃない。空気の流れがある場所が良い。そのあとに、エアコンをつけたり机や椅子などを整えて花の水を入れ替えたりしている。
このように、まず、自分にとって落ち着く空間を作ってから、床や机の汚れや乱れがないかなと部屋を見回して、迎えいれる準備をする。その準備は、クライエントさん一人一人に対して、完全に同じではなく、少しずつ違いがある。それは、これから来るクライエントさんのことを思い浮かべながら準備をするので、今、必要なものは何か? が少しずつ変わってくるからだと思う。
たまに、三軒茶屋に着く電車が遅くなって、慌ててバタバタしていることもあるけれども…。
そうこうしているうちに、すぐに約束の時間が来てしまう。準備は幾ら準備してもし足りないなと毎回感じる瞬間である。
相談が終わり、全ての片づけをして、部屋の電気を消し、玄関のドアを閉める瞬間、部屋に誰もいなくなるのが、ほんの少しだけ寂しさを感じさせる。またすぐ来るからねと、こころの中で呟いて、鍵を閉める。たぶん、この時に私は深い息をついている。
しばしのお休み。
三軒茶屋のカウンセリングルームには、物が少ないのだけれども、私としては箱庭療法で使う、箱庭のセットが欲しいなと、ずっと思っている。必要か必要ではないかという二択ならば、絶対に必要なものとは言えないのだけれども。必ずしも必要ではないものに、車のブレーキで言うところの遊びのような余裕と、「間」があるようにも感じている。
生きていく中で、休みが必要なように、また、遊びも必要だと思いません?
きっちりとした枠はなくとも、リレー書簡を書いていくということに関しては、ちゃんと統一されているのだから。その安心感の中にこそ、遊びは生きるのだと思います。だからこそ、どちらが買ってきてくれたか分からない、賞味期限が時々切れている冷蔵庫の牛乳も、ありがたく勝手に使わせてもらってミルクティーを飲んでいます。
(K.N)
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