head_img_slim
HOME > コラム(note)のページ >リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第46回

リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第46回「優しさの味」


前回のコラムで「優しさ」ってなんだろう?とありましたが、これは、ありふれているのに、難しい問ですよね。

私の中で「優しい人」のモデルは、子どもの頃から「風の谷のナウシカ」の主人公のナウシカでした。そのせいか、私の中で優しさはいつも強さとセットでしたね。人に優しくあるためには、強くなければいけない、みたいな。

「優しい」を辞書で引くと、①姿・様子などが優美である ②他人に対して思いやりがあり、情が細やかである ③性質が素直でしとやかである。穏和で、好ましい感じである ④悪い影響を与えない。刺激が少ない などとあります。どこにも「強い」要素はなさそうです(笑)

今話題にしている「優しい」は②の他人に対して思いやりがあり、情が細やかである、の意味だと思いますが、本当の意味で他人を思いやるとはどういうことか? という問いが出てくるから難しくなるのですよね。相手にとって耳が痛いことでも、相手のためを思って言うのが優しさなのか、相手が言って欲しい言葉で慰めるのが優しさなのか。

結局、どちらも優しさだと思います。他人に対しての思いやり、とは他人の状況や心情に思いを巡らせることであり、相手にとっての正解を知っていることではないので。相手のことを細やかに考えて取った言動は全て「優しい」なのです。だから、受け取る側にしてみれば他人からの「優しさ」が嬉しいときもあれば、重いとき、腹立たしいとき、心苦しいときなどがあるのです。

そんな、十人十色の優しさですが、もし「優しさ」に味があったらどんな味だろうなぁと想像してみました。

私にとって、「優しさ」は、出汁がしっかり利いたお味噌汁のような、じんわりとお腹の中から温まって、心と体の栄養になる気がする味です。見た目のかわいいお菓子とか、こってりした洋食ではなくて、素朴で温かいお味噌汁。

先に例を出したナウシカの優しさは、噛みごたえがあって、栄養があって、命をつないでくれる・・・ 干し肉みたいな味でしょうか(笑) いや、食べたことないけど、ここはチコの実かな?

失敗して落ち込んでいるときに、失敗を笑い飛ばして励ましてくれる友人の優しさは、爽やかなオレンジかグレープフルーツの味がしそうだし、自分の驕りや怠慢を諌めてくれる先達の優しさは、口に入れたときは固くてゴワゴワして、なかなか飲み込めないけれど、噛めば噛むほど味がでてくる高級なスルメみたいな味がしそうです。

世の中には、甘くて柔らかくてふわふわ、の優しさもあれば、良薬は口に苦しと言わんばかりの優しさもあるでしょう。お水のように無味無臭だけど、心身に染み渡る、みたいな優しさもあるかもしれませんね。

こうして優しさの味を想像してみると、色々な優しさがあっていいし、その時々で欲しい優しさが違うことも、すっと理解できる気がしませんか。

一方で、いつも自分の欲しい優しさをくれる人はなかなか居ないことも理解できるし、自分が欲しい優しさだけを求めることは、結局自分に都合がいいことだけを求めているんだと気づくことが出来ると思います。

ときには、良薬も、スルメも、珍味も口にして、人の優しさを味わう舌の肥えた人になりましょう。 
                (M.C)

コラム(テキスト版)倉庫

リレー書簡コラム『目次』
2023.12.4 リレー書簡コラム第46回「優しさの味」
2023.11.27 リレー書簡コラム第45回「優しさのお届けもの」
2023.11.20 リレー書簡コラム第44回「後ろめたくて寂しい日」
2023.11.13 リレー書簡コラム第43回「 友がみなわれよりえらく見ゆる日は」
2023.11.6 リレー書簡コラム第42回「雨に歌えば」
2023.10.30 リレー書簡コラム第41回「ときには立ち止まること」
2023.10.23 リレー書簡コラム第40回「前がダメなら上へ」
2023.10.16 リレー書簡コラム第39回「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
2023.10.9 リレー書簡コラム第38回「スモールステップの罠」
2023.10.2 リレー書簡コラム第37回「好きと嫌いと苦手と得意」
2023.9.25 リレー書簡コラム第36回「言葉にできない」
2023.9.18 リレー書簡コラム第35回「苦手な人」
2023.9.11 リレー書簡コラム第34回「耳をすませば」
2023.9.4 リレー書簡コラム第33回「心地よいリズムで」
2023.8.28 リレー書簡コラム第32回「五感スイッチ」
2023.8.21 リレー書簡コラム第31回「力まず 軽く参りましょう」
2023.8.7 リレー書簡コラム第30回「あぁ、夏休み」
2023.7.31 リレー書簡コラム第29回「Message in a bottle」
2023.7.24 リレー書簡コラム第28回「カオスと灯台とボイジャー 」
2023.7.17 リレー書簡コラム第27回「混沌の中で」
2023.7.10 リレー書簡コラム第26回「結論は先延ばしで」
2023.7.3 リレー書簡コラム第25回「正しいこと、本当のこと」
2023.6.26 リレー書簡コラム第24回「心の旅」
2023.6.19 リレー書簡コラム第23回「ひとり時間 ひとり旅」
2023.6.12 リレー書簡コラム第22回「誰かのために整えること、一人でいること」
2023.6.5 リレー書簡コラム第21回「あれもこれも失敗じゃない」
2023.5.29 リレー書簡コラム第20回「解釈違いは健全に」
2023.5.8 リレー書簡コラム第19回「手紙に着いてのあれこれ」
2023.5.1 リレー書簡コラム第18回「愛を込めてお手紙を」
2023.4.29 リレー書簡コラム第17回「声の力」
2023.4.22 リレー書簡コラム第16回「意外性の模索」
2023.4.15 リレー書簡コラム第15回「チャットGPT」
2023.4.8 リレー書簡コラム第14回「知らないものは探せない」
2023.4.1 リレー書簡コラム第13回「エネルギーの循環」
2023.3.25 リレー書簡コラム第12回「攻撃性スイッチ?」
2023.3.18 リレー書簡コラム第11回「攻撃性の行方」
2023.3.11 リレー書簡コラム第10回「失われた遊び」
2023.3.4 リレー書簡コラム第9回「遊びごころ」
2023.2.27 リレー書簡コラム第8回「本気で遊ぶ」
2023.2.20 リレー書簡コラム第7回「場を作る」
2023.2.13 リレー書簡コラム第6回「息をつく場所」
2023.2.6 リレー書簡コラム第5回「三茶徒然日記」
2023.1.30 リレー書簡コラム第4回「さてさて、」
2023.1.23 リレー書簡コラム第3回「返信への返信」
2023.1.16 リレー書簡コラム第2回「返信」
2023.1.9 リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第1回
2023.3.14 連載『家族だって他人』タイトル一覧表
2021.12.3 第8回 顧問なのかマスコットなのか
2021.11.6 第7回 時の過ぎゆくままに
2021.10.12 第6回 こだわりの…。
2021.9.10 第5回 出会うために、出会う。
2021.7.21 第4回 ほどよさのススメ―人間関係における圧について
2021.7.12 第3回 ケアに疲れたあなたへ
2021.6.30 第2回 気持ちに名前をつけてみる―ストレスと上手につきあうために
2021.5.21 第1回 人生のテキストと歴史という布 ―始まりの言葉に代えて―

 

お問い合わせはコチラまで

icon ご不明な点がございましたら、まずはお気軽にご相談下さい。
→お問合せフォームへ

→ご予約のお申込はこちらへ


 

ページトップに戻る