head_img_slim
HOME > コラム(note)のページ >リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第39回

リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第39回「虎穴に入らずんば虎子を得ず」  


 前回の『スモールステップの罠』を読んで、スモールステップが元々大きな目標を設定するのにあまり向かないと言っている通りなのだろうなぁと思います。
 
 結局のところ『スモールステップ』という本来の用語とその使い方を、あんまりよく知らない人が自分の都合の良い一般化をし、それを聞かされて、やらされたりやってみようと思ったりした人が振り回されることになってしまう悲劇ですよね…。

 半端に学んだことを半端な解釈で勝手に行うことの怖さを実感します。生兵法は怪我のもと。

 とはいえ、もうそういうスモールステップがあちこちに、出回っているのだとすれば、私が思うところは、一つ。自分ひとりで行わないことが良いのではないかということです。

 スモールステップの大事なところというと、うまくいかなかった場合に、何がうまくいっていないか検証して、もう一度、ステップを作り直す部分です。
 一人だと、失敗した時に、その検証がうまくできない可能性があります。英単語の小テストで満点を取ることが、もし出来なかったのだとしたらそれは、スモールステップとしては、ちょっと大きすぎたということになります。もしくは、満点を取り続けても先に進まないとすれば、次の設定を立てるべき時か、もしくはステップの作り方が元々間違っていた可能性があるでしょう。

 本来のスモールステップとは、目標達成のためにものすごく緻密かつ、オーダーメイドに作られるものです。なので、一人で行うのではなく、サポートしてくれる人は大事です。出来れば、スモールステップをよく理解している専門家の方と一緒に、進めていくのが良いかもしれません。

 と思いつつ、でも世の中には「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と言葉があるように、危険を冒さないと欲しいものが手に入らない場面というのもあります。そこでは、思い切って飛び込んでみることも必要でしょう。

 ただ、虎穴に入るためのスモールステップを作れば良いではないかということもできるのですが…。この場合、そのスモールステップは、虎穴に入るために絶対完全に安全であるという状況を作り出すぐらいしっかりした計画なのか? それとも、そうは言っても絶対は、ないという危険(不安と言っても良いです)がありながらも、虎穴に入るのか? その違いかなと思うのです。

 現実世界において、虎穴に入るための絶対安全というのは、なかなかそう簡単に実現できるものではありません。そうなると、少々の不安や危険があっても、進むことが必要になるのでしょう。

 ただ、私はどちらかというと、それで失敗した後のリスクを回避したい人間なので、失敗してただ、痛いだけなのか。それとも生命を脅かすものなのか? という部分を考えます。失敗した後のフォローが必要なものにはそれなりの準備をしますし、フォローが出来なくても何とかなりそうなものの場合、そのまま突き進むかもしれません。

 ここで難しいのは、その失敗した後の「痛み」というのが、人によって違って、耐えられる強さも違うということでしょう。

 失敗に強くなるように補強するのか? 失敗しないようにするのか? 失敗しても助けてもらえる環境を作るのか? 

 これらのどれが自分にとって合うのかというのを、考えたり、調整したり、オーダーメイドに考えていかないといけないなと思います。

 結局のところ、大事なのは、失敗を恐れない精神ではなく、失敗しても温かく見守ってもらえる環境だったり、傷を負っても帰れる場所であったり、応援し助けてくれる人の有無ではないでしょうか? それは例えば常に現実にあるものではなく、過去の記憶、心の中にある拠り所であったとしてもです。そういった守られ大事にされた記憶や経験が、次に進む勇気を与えてくれるのだと思うのです。


コラム(テキスト版)倉庫

リレー書簡コラム『目次』
2023.10.16 リレー書簡コラム第39回「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
2023.10.9 リレー書簡コラム第38回「スモールステップの罠」
2023.10.2 リレー書簡コラム第37回「好きと嫌いと苦手と得意」
2023.9.25 リレー書簡コラム第36回「言葉にできない」
2023.9.18 リレー書簡コラム第35回「苦手な人」
2023.9.11 リレー書簡コラム第34回「耳をすませば」
2023.9.4 リレー書簡コラム第33回「心地よいリズムで」
2023.8.28 リレー書簡コラム第32回「五感スイッチ」
2023.8.21 リレー書簡コラム第31回「力まず 軽く参りましょう」
2023.8.7 リレー書簡コラム第30回「あぁ、夏休み」
2023.7.31 リレー書簡コラム第29回「Message in a bottle」
2023.7.24 リレー書簡コラム第28回「カオスと灯台とボイジャー 」
2023.7.17 リレー書簡コラム第27回「混沌の中で」
2023.7.10 リレー書簡コラム第26回「結論は先延ばしで」
2023.7.3 リレー書簡コラム第25回「正しいこと、本当のこと」
2023.6.26 リレー書簡コラム第24回「心の旅」
2023.6.19 リレー書簡コラム第23回「ひとり時間 ひとり旅」
2023.6.12 リレー書簡コラム第22回「誰かのために整えること、一人でいること」
2023.6.5 リレー書簡コラム第21回「あれもこれも失敗じゃない」
2023.5.29 リレー書簡コラム第20回「解釈違いは健全に」
2023.5.8 リレー書簡コラム第19回「手紙に着いてのあれこれ」
2023.5.1 リレー書簡コラム第18回「愛を込めてお手紙を」
2023.4.29 リレー書簡コラム第17回「声の力」
2023.4.22 リレー書簡コラム第16回「意外性の模索」
2023.4.15 リレー書簡コラム第15回「チャットGPT」
2023.4.8 リレー書簡コラム第14回「知らないものは探せない」
2023.4.1 リレー書簡コラム第13回「エネルギーの循環」
2023.3.25 リレー書簡コラム第12回「攻撃性スイッチ?」
2023.3.18 リレー書簡コラム第11回「攻撃性の行方」
2023.3.11 リレー書簡コラム第10回「失われた遊び」
2023.3.4 リレー書簡コラム第9回「遊びごころ」
2023.2.27 リレー書簡コラム第8回「本気で遊ぶ」
2023.2.20 リレー書簡コラム第7回「場を作る」
2023.2.13 リレー書簡コラム第6回「息をつく場所」
2023.2.6 リレー書簡コラム第5回「三茶徒然日記」
2023.1.30 リレー書簡コラム第4回「さてさて、」
2023.1.23 リレー書簡コラム第3回「返信への返信」
2023.1.16 リレー書簡コラム第2回「返信」
2023.1.9 リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第1回
2023.3.14 連載『家族だって他人』タイトル一覧表
2021.12.3 第8回 顧問なのかマスコットなのか
2021.11.6 第7回 時の過ぎゆくままに
2021.10.12 第6回 こだわりの…。
2021.9.10 第5回 出会うために、出会う。
2021.7.21 第4回 ほどよさのススメ―人間関係における圧について
2021.7.12 第3回 ケアに疲れたあなたへ
2021.6.30 第2回 気持ちに名前をつけてみる―ストレスと上手につきあうために
2021.5.21 第1回 人生のテキストと歴史という布 ―始まりの言葉に代えて―

 

お問い合わせはコチラまで

icon ご不明な点がございましたら、まずはお気軽にご相談下さい。
→お問合せフォームへ

→ご予約のお申込はこちらへ


 

ページトップに戻る