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リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第35回「苦手な人」  


お返事ありがとうございます。波長、リズム、テンポ。それぞれ経験によって培われた感覚によって、言葉にならない相手の特徴を掴んで、合わせていくスキルを持っているようですね。

先週のコラムで、相手のテンポが分かることを「特殊能力」と言っていましたが、これで言うと私の特殊能力(笑)は、相手がちゃんと説明できなくても、言いたいことを概ね理解できる、だと思いました。

心理職を目指す前からの特技で、特に「あれ、これ、それ」と指示語ばかりの人と、あまり苦もなく会話が出来ます(笑) 相手の言いたいことを汲むのが得意なおかげで、他人とコミュニケーションを取ることに苦手意識を持っている方から、こんなに自分の話を分かってくれる人はいない、と言われることがあり、自分の仕事とこの能力(?)の相性の良さを感じます。

特殊能力と呼べるほどではない気がしますが、こういう小さな「得意」が自分の職業とか、進むべき道に繋がっているのかも知れないなと思いました。

さて、話は変わりますが、おふたりは「苦手な人」や「苦手なタイプ」はいますか? まあ、誰にでも「苦手な人」の一人や二人、いると思うのですが、クライエントさんや、友人知人を見ていて思うのが、生きづらい人は「苦手な人」がとっても多いなあということです。職場のAさんが苦手、取引先のBさんも苦手、友人グループのCさんも実は嫌い、となっていくと何処にいても心安らぎません。こういう人は職場や友人を変えても、やっぱり「苦手な人」が出てくるもので、なかなか安心できる居場所を見つけることが出来ません。究極、「人が嫌い」になってしまうと、引きこもって一人で生きざるを得なくなってしまいます。

どういう人が苦手か、というのはケース・バイ・ケースかと思いますが、往々にしてあるのが、相手のちょっとした言動に、過去に自分を苦しめた人と似たところを見つけてしまい、その人と同じように苦手だと思ってしまうとか、相手が自分のことを嫌いだろうと思い込んでしまうということです。そして、過去の嫌な人と同じだ、とか、相手は自分のことを嫌いだ、という思い込みが前提にあってその人と関わっていくので、当然のように疎遠になったり、関係が拗れたりします。だって、「関係がうまくいかないレール」に最初に乗ってしまうのですから。

カウンセリングでは、この他人や他人の感情に対する思い込みを変えていこうと、試みるわけですが、今日はその手前でちょっと立ち止まって考えてみたいのです。

「苦手な人」ばかりいる世界で生きている、ってどんな感じだろう? と。
自分のことを、好いてくれない、評価してくれない、認めてくれない・・・・ 自分以外の人とは仲良く楽しそうにしている、他の人には優しいのに自分には冷たい、そもそも自分に興味を持ってくれない、この人は自分といても楽しくない、一緒にいてもらって申し訳ない・・・ そんな気持ちを持ちながら、その人と一緒の空間で、仕事をしたり、遊びに行ったりしないといけない・・・。ひとりで部屋にいても、SNSを通じて、その人が自分以外の人達と楽しく過ごしている様子が流れてきます。そうすると、「おかしいのは自分の方なんだ」という気持ちが生まれて、孤独な気分になるのは無理からぬことでしょう。

そして、くよくよしていないで仕事や何かを頑張ろう、成果を出そう、と立ち上がったとしても、その行く手をやはり「苦手な人」に塞がれてしまうのです。頑張っても結局人間関係のせいでだめなんだ・・・と思えば、やりきれない気持ちにもなるでしょうね。

こんなふうに「苦手な人ばかり」に囲まれて日々を生きていたら、孤独で、不安で、生きていることがどんどん辛くなって来るだろうなと思います。

でも「苦手な人」をいち早く見つけて警戒する、できるだけ避ける、という行動様式自体は、自分を守るために発達したことで、ある意味最初に話題にした「特殊能力」のひとつなのではないか、と思います。全く警戒しないでいて、後ろから斬られるより、いつでも逃げられるように身構えておこう、という思考であるわけだから。その能力を、どうにか今の自分の味方につけることは出来ないものでしょうか。

お二人はどう思いますか?
                   (M.C)



コラム(テキスト版)倉庫

リレー書簡コラム『目次』
2023.9.18 リレー書簡コラム第35回「苦手な人」
2023.9.11 リレー書簡コラム第34回「耳をすませば」
2023.9.4 リレー書簡コラム第33回「心地よいリズムで」
2023.8.28 リレー書簡コラム第32回「五感スイッチ」
2023.8.21 リレー書簡コラム第31回「力まず 軽く参りましょう」
2023.8.7 リレー書簡コラム第30回「あぁ、夏休み」
2023.7.31 リレー書簡コラム第29回「Message in a bottle」
2023.7.24 リレー書簡コラム第28回「カオスと灯台とボイジャー 」
2023.7.17 リレー書簡コラム第27回「混沌の中で」
2023.7.10 リレー書簡コラム第26回「結論は先延ばしで」
2023.7.3 リレー書簡コラム第25回「正しいこと、本当のこと」
2023.6.26 リレー書簡コラム第24回「心の旅」
2023.6.19 リレー書簡コラム第23回「ひとり時間 ひとり旅」
2023.6.12 リレー書簡コラム第22回「誰かのために整えること、一人でいること」
2023.6.5 リレー書簡コラム第21回「あれもこれも失敗じゃない」
2023.5.29 リレー書簡コラム第20回「解釈違いは健全に」
2023.5.8 リレー書簡コラム第19回「手紙に着いてのあれこれ」
2023.5.1 リレー書簡コラム第18回「愛を込めてお手紙を」
2023.4.29 リレー書簡コラム第17回「声の力」
2023.4.22 リレー書簡コラム第16回「意外性の模索」
2023.4.15 リレー書簡コラム第15回「チャットGPT」
2023.4.8 リレー書簡コラム第14回「知らないものは探せない」
2023.4.1 リレー書簡コラム第13回「エネルギーの循環」
2023.3.25 リレー書簡コラム第12回「攻撃性スイッチ?」
2023.3.18 リレー書簡コラム第11回「攻撃性の行方」
2023.3.11 リレー書簡コラム第10回「失われた遊び」
2023.3.4 リレー書簡コラム第9回「遊びごころ」
2023.2.27 リレー書簡コラム第8回「本気で遊ぶ」
2023.2.20 リレー書簡コラム第7回「場を作る」
2023.2.13 リレー書簡コラム第6回「息をつく場所」
2023.2.6 リレー書簡コラム第5回「三茶徒然日記」
2023.1.30 リレー書簡コラム第4回「さてさて、」
2023.1.23 リレー書簡コラム第3回「返信への返信」
2023.1.16 リレー書簡コラム第2回「返信」
2023.1.9 リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第1回
2023.3.14 連載『家族だって他人』タイトル一覧表
2021.12.3 第8回 顧問なのかマスコットなのか
2021.11.6 第7回 時の過ぎゆくままに
2021.10.12 第6回 こだわりの…。
2021.9.10 第5回 出会うために、出会う。
2021.7.21 第4回 ほどよさのススメ―人間関係における圧について
2021.7.12 第3回 ケアに疲れたあなたへ
2021.6.30 第2回 気持ちに名前をつけてみる―ストレスと上手につきあうために
2021.5.21 第1回 人生のテキストと歴史という布 ―始まりの言葉に代えて―

 

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