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リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第34回「耳をすませば」  


 リズムの違いと聞いて、異なるリズムを組み合わせた曲調をポリリズムというのを思い出しました(Perfumeの「ポリリズム」はまさしくその通りな曲です)。

 違うリズムを持った人が集まって重なれば、違ったリズムになりますね。しかしですよ。リズムとテンポはまた別です。話すテンポではなくて、生きるテンポの話です。

 というのも子どもの頃、祖父に何か音楽をと言われて当時自分が気に入っていたヴィバルディの「秋」第3楽章
(参考:https://youtu.be/EF4K2avg8AA?si=QjBLY6RgYQ2MMBkB)をかけたら

「このテンポは爺には速すぎる。若者のテンポだね、この曲は」

と苦い顔をされたことを何故か覚えていて。

 当時の私は年齢によって合わないテンポというものがあるのか!と軽く衝撃を受けたものです。

 確かにヴィバルディの「秋」のテンポはスキップかツーステップでも踏めそうな軽やかさで、何で「秋」なのにこの軽さなんだろう、と思わなくもない。くるくるハラハラと舞い落ちる落ち葉のイメージなのかなあ。錦秋という時候の挨拶がしっくり来るゴージャスさもありませんか。

 しかし確かに、当時の祖父は戦時を生き延びた70代で、今の70代とは違う、どこからどう見ても年寄り、自他ともに認める年寄りでしたから、まあこんな軽いテンポは似合わないよ、と当時の自分にアドバイスしたくもあります。

 そしてその辺からでしょうか、私は心理職になるずいぶん前から誰か印象深い人と出会うとその人のテンポを探る癖がつきました。すると面白いもので、人によってそれがずいぶん違うのですよ。そして同じ人でも時と場合によって速さが変わる。

「いつもはゆったりしている人なのに、今日は何だか焦ってるな」

とか。

「いつもは軽快なテンポの人だけど今日は停滞してる」

とか、慣れるとわかるようになります(あくまで私の場合)。しかし分かったところで何が出来るわけでもなく。この特殊能力は長らく宝の持ち腐れだったのですが、何の因果か心理職になってみると意外と役に立ちました。むしろ精度が上がってテンポだけでなくその人の曲や歌が聞こえてくるようになったり。

移動中や犬の散歩中にイヤホンでぼーっと音楽を垂れ流すのが習慣化しているのですが、最近はサブスク万歳です。たいてい考えるともなく考えているとふっと聞きたくなる曲が天から降ってくるんですが、その時にすぐ検索してすぐ聞けるのが便利すぎる(散歩の途中にその都度立ち止まらせられる愛犬には迷惑でしょうが)。さらに、幅広い選曲ができるのがありがたい。
話がそれました。人の生きるテンポの違いでしたね。

年代によるテンポの違いももちろんありますが、それよりもやはり個人差が大きい気がします。属するコミュニティや関わる相手とテンポが合わないと大変しんどい。

 これって何だろう。心理学的に言うと力動になるでしょうか?

 そしてまたふと。映画「ボヘミアンラプソディ」で、フレディ・マーキュリーがブライアン・メイから言われていた言葉を思い出しました。「Slow down.」訳は「生き急ぐな」でしたっけ。

 ちなみに祖父がその後気に入っていた曲は、ヴィバルディの「冬」でした。美しい白銀の雪野原を連想させる、繊細で美しいゆったりとした旋律でした。
           (C.N)


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リレー書簡コラム『目次』
2023.9.11 リレー書簡コラム第34回「耳をすませば」
2023.9.4 リレー書簡コラム第33回「心地よいリズムで」
2023.8.28 リレー書簡コラム第32回「五感スイッチ」
2023.8.21 リレー書簡コラム第31回「力まず 軽く参りましょう」
2023.8.7 リレー書簡コラム第30回「あぁ、夏休み」
2023.7.31 リレー書簡コラム第29回「Message in a bottle」
2023.7.24 リレー書簡コラム第28回「カオスと灯台とボイジャー 」
2023.7.17 リレー書簡コラム第27回「混沌の中で」
2023.7.10 リレー書簡コラム第26回「結論は先延ばしで」
2023.7.3 リレー書簡コラム第25回「正しいこと、本当のこと」
2023.6.26 リレー書簡コラム第24回「心の旅」
2023.6.19 リレー書簡コラム第23回「ひとり時間 ひとり旅」
2023.6.12 リレー書簡コラム第22回「誰かのために整えること、一人でいること」
2023.6.5 リレー書簡コラム第21回「あれもこれも失敗じゃない」
2023.5.29 リレー書簡コラム第20回「解釈違いは健全に」
2023.5.8 リレー書簡コラム第19回「手紙に着いてのあれこれ」
2023.5.1 リレー書簡コラム第18回「愛を込めてお手紙を」
2023.4.29 リレー書簡コラム第17回「声の力」
2023.4.22 リレー書簡コラム第16回「意外性の模索」
2023.4.15 リレー書簡コラム第15回「チャットGPT」
2023.4.8 リレー書簡コラム第14回「知らないものは探せない」
2023.4.1 リレー書簡コラム第13回「エネルギーの循環」
2023.3.25 リレー書簡コラム第12回「攻撃性スイッチ?」
2023.3.18 リレー書簡コラム第11回「攻撃性の行方」
2023.3.11 リレー書簡コラム第10回「失われた遊び」
2023.3.4 リレー書簡コラム第9回「遊びごころ」
2023.2.27 リレー書簡コラム第8回「本気で遊ぶ」
2023.2.20 リレー書簡コラム第7回「場を作る」
2023.2.13 リレー書簡コラム第6回「息をつく場所」
2023.2.6 リレー書簡コラム第5回「三茶徒然日記」
2023.1.30 リレー書簡コラム第4回「さてさて、」
2023.1.23 リレー書簡コラム第3回「返信への返信」
2023.1.16 リレー書簡コラム第2回「返信」
2023.1.9 リレー書簡コラム『拝啓、みこと心理臨床処 様』第1回
2023.3.14 連載『家族だって他人』タイトル一覧表
2021.12.3 第8回 顧問なのかマスコットなのか
2021.11.6 第7回 時の過ぎゆくままに
2021.10.12 第6回 こだわりの…。
2021.9.10 第5回 出会うために、出会う。
2021.7.21 第4回 ほどよさのススメ―人間関係における圧について
2021.7.12 第3回 ケアに疲れたあなたへ
2021.6.30 第2回 気持ちに名前をつけてみる―ストレスと上手につきあうために
2021.5.21 第1回 人生のテキストと歴史という布 ―始まりの言葉に代えて―

 

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