head_img_slim
HOME > コラム(note)のページ  >連載コラム『心たちのすることは』第39回

葛と藤


 最近富に「葛藤」と「葛藤すること」について考えている。英語では、コンプレックス;complexという。日本語では葛藤。葛(かずら)と藤(ふじ)。

葛:マメ科クズ属のつる性の多年草である。山野に生え、半低木となる。日本では、根を用いて食材の葛󠄀粉や漢方薬が作られ、花は万葉の昔から秋の七草の一つに数えられている。

(Wikipedia)

藤:マメ科フジ属のつる性落葉木本で日本の固有種。本州から九州にかけて分布する。花が咲く時期には「藤棚」が鑑賞・観光の対象となる。

(Wikipedia)


 なるほど、どちらもツル草。これは絡まったら硬そうである。さらに調べてみたところ、語源は仏教用語「ツル草がもつれて解けない状態」を指し、これを断ち切れないことが煩悩の一つであるそうな。漢字の字面からなんとなく想像はついたけれども、こんがらがって大変な状態なのが「葛藤」であるのだな、と改めて思う。

 そして大切なことは、葛藤はどの人の胸のうちにもあるということだ。
「父親との葛藤」や「母親との葛藤」というとちゃんと心理学しているように読めるが、英語にすると、ファザーコンプレックス、略してファザコン、マザーコンプレックスは略してマザコン。一気に世俗的な言葉になってしまうし、意味まで変わってしまう。困ったものである。

閑話休題。

 葛と藤から想起されるのは、葛藤とは硬く絡まった感情のツル草のようだということだ。ではこれらは、どう扱えばいいのだろう。

 絡まっているなら無理やり解けばいいだろうか?では解けない時はどうしようか?

 ツルを断ち切ればいいだろうか?でも切ったら枯れてしまうとしたら?葛藤がなくなればそれはさっぱりするだろうけれども、しかし葛や藤が枯れたあとにその地は豊かになるだろうか?

 などなど考え始めるときりがない。で、わたしが思いついたのは、人のうちにある葛や藤を、健やかに育てる方法はないのか、ということだ。枝葉や根の様子はどうだろうか、傷んでいないだろうか、そのツル草が根ざしている土の乾き具合や肥沃さは?

 とまあ、植物を健康に育てるには細かく見て、手入れをする必要がある。これがまた大変なんであるが、葛も藤も育てがいは抜群だ。

 繰り返すが、どの人も大小の違いはあれど、胸に葛藤を抱えている。それをどうするか、というそのやり方が、人の生き方と言えるのではないか。
                   (C.N)

コラム(テキスト版)倉庫

リレー書簡コラム『拝啓みこと心理臨床処 様』目次
連載『家族だって他人』タイトル一覧表
2024.10.7 連載コラム第39回『葛と藤』
2024.9.30 連載コラム第38回『続かなくても大丈夫』
2024.9.23 連載コラム第37回『危険なマインドフル』
2024.9.16 連載コラム第36回『マインドフルネスを探す旅へ~#最終回』
2024.9.9 連載コラム第35回『マインドフルネスを探す旅へ~#7週目』
2024.9.2 連載コラム第34回『閑話休題? プラクティスデー 』
2024.8.26 連載コラム第33回『マインドフルネスを探す旅へ~#6週目』
2024.8.19 連載コラム第32回『マインドフルネスを探す旅へ~ #5週目』
2024.8.12 連載コラム第31回『マインドフルネス中間地点~ #4週目』
2024.8.5 連載コラム第30回『「マインドフルネス」を探す旅へ~ #三週目』
2024.7.29 連載コラム第29回『「マインドフルネス」を探す旅へ~#第二週目』
2024.7.22 連載コラム第28回『マインドフルネスを探す旅へ~ #一週目』
2024.7.15 連載コラム第27回『心の海原』
2024.7.9 連載コラム第26回『時ぐすり』
2024.7.2 連載コラム第25回『野菜ジュース』
2024.6.25 連載コラム第24回『梅のお仕事』
2024.6.18 連載コラム第23回『緩むスキル』
2024.6.11 連載コラム第22回『ある雨の日に』
2024.6.4 連載コラム第21回『天才のものさし』
2024.5.28 連載コラム第20回『心の機能』
2024.5.21 連載コラム第19回『愛でる気持ち』
2024.5.14 連載コラム第18回『語れない死後のこと』
2024.5.6 連載コラム第17回『ドキドキが止まらない』
2024.4.29 連載コラム第16回『待つ必要』
2024.4.22 連載コラム第15回『紡ぐ言葉が見つからない』
2024.4.15 連載コラム第14回『心・技・体というからには』
2024.4.8 連載コラム第13回『環境を整える』
2024.4.1 連載コラム第12回『安心と安全が謳われる社会で』
2024.3.26 連載コラム第11回『揺れ惑う』
2024.3.18 連載コラム第10回『恋』
2024.3.9 連載コラム第9回『「またね!」の呪文』
2024.3.2 連載コラム第8回『決める心と書いて決心』
2024.2.24 連載コラム第7回『転がる心』
2024.2.17 連載コラム第6回『眠れない朝にサヨナラ』
2024.2.10 連載コラム第5回『心の宿るところ』
2024.2.3 連載コラム第4回『こころと私と、私のこころ』
2024.1.27 連載コラム第3回『心は裏腹なんて言わないで』
2024.1.20 連載コラム第2回『心は口ほどにものを言うか』
2024.1.13 連載コラム第1回『心たちのすることは~プロローグ~』
2021.12.3 第8回 顧問なのかマスコットなのか
2021.11.6 第7回 時の過ぎゆくままに
2021.10.12 第6回 こだわりの…。
2021.9.10 第5回 出会うために、出会う。
2021.7.21 第4回 ほどよさのススメ―人間関係における圧について
2021.7.12 第3回 ケアに疲れたあなたへ
2021.6.30 第2回 気持ちに名前をつけてみる―ストレスと上手につきあうために
2021.5.21 第1回 人生のテキストと歴史という布 ―始まりの言葉に代えて―

 

お問い合わせはコチラまで

icon ご不明な点がございましたら、まずはお気軽にご相談下さい。
→お問合せフォームへ

→ご予約のお申込はこちらへ


 

ページトップに戻る