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『こころと私と、私のこころ』


例えば、カウンセリング室での一幕として、こんなやりとりがあります。

クライアントのAさんが、「これこれ、こういうことがあって、その時、自分はこう思っている、ということに気がついたんです。」と嬉しそうにおっしゃるので、私も一緒に嬉しくなって「それは新しい発見ですね」と返します。するとAさんは、さらに自分の感じ方や、考え方について、話し続け、新たな自分を発見していきました。

また、クライアントのBさんは、未来の選択肢の◯◯か☓☓のどちらを選ぼうかと悩んでいて、「条件を整理していくと◯◯を選んだほうがいいと思うんですけど・・・」と言いながら、目には薄っすらと涙が滲んできます。私は、「Bさんには△△な気持ちがあるから、◯◯を選ぶと辛いように思います。実は◯◯は、選択肢ではないのかもしれませんよ?」と返してみます。するとBさんはうーんと考えて黙ってしまいましたが、しばらくして、「たしかに私、◯◯は嫌だ、って思ってます。」と苦笑いされました。

こうして、自分のほんとうの気持ちは、よくよく考えたり探したりして、発見しないと分からないことがよくあります。しかも、自分のほんとうの気持ちに気づかずに、合理的と思われる選択や、他人に評価されるだろう選択をして、悩んだり疲れたりしている人もたくさんいます。

そして、自分の本当の気持ちに気づいただけで、悩みがするすると解決してしまうことまであります。「なーんだ、私が本当に欲していたのは、こういうことだったのね」と人生の方向が決まってしまう人もいるからです。(もちろん、それだけでは解決しない悩みもたくさんありますが、少なくとも、自分の気持ちがわかることで、選択肢ははっきりします。)

それくらい大切な自分の気持ちなのに、なんでよく考えないとわからないのだろう、と思います。私の心は、私なのか、私の中にあるけど、私じゃないのか・・・なんて考え出してしまうとわけが分からなくなります。

でも、冷静に考えると、自分の状態が自分ではよく分からない、という現象はありふれています。体のどこかが痛いときに、どの臓器が痛いのかはっきりわからないことはよくあるし(背中が痛いと思ったら膵臓がんだった、とか時々耳にしますよね)、意図的に自分を騙すこともありますよね。

本当は疲れて眠くてたまらないけれど、今は休めないので、栄養ドリンクを飲んで元気なフリで乗り切ろう!とか、本当はお腹がぺこぺこだけど、減量中なので他のことをして気を紛らわそう、とか。そうしているうちに、疲れていることや食べたい気持ちを忘れてしまって、平気になってしまうと、自分をうまく騙せたことになります。でも、自分を騙せる時間はそう長くないこと、特に大きな無理は本当に短時間しか続かないことを、私達はよく知っています。(中年にもなると、一晩でも徹夜したらそのつけを払うのに数日かかりますからね・・・) だから、無理は一時凌ぎにしかなりません。

それを分かっていれば、ときには無理も仕方ない、と思えます。
ただ、自分が無理をしていると分かって無理することが大事なのだろうな、と日々自分以外の人を観察していると思います。(自分のことは外から観察できないので。)
分かっていれば、無理をした自分を後から労ったり、無理を止めたりすることが出来ますが、何を無理しているのか分かっていなければ、気づかないうちに限界を越えてしまうこともありますから。

私の心も身体も、私のものだから、ちゃんと自分で大切にしたい。そのためには、自分の心と身体の声に耳を澄ませて、何を望んでいるのかしっかり聞いてあげたい。そんな思いを持った人達の、ほんとうの気持ちを探すジャーニーにお供して、ときに道を照らし、ときに背中を押し、ときに横を歩くのが、カウンセラーなのかなと思うのです。

(M.C)



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